共振するハビトゥス

主観が9割

史上空前の感動バカ映画 劇場版おっさんずラブ感想【ネタバレあり】

 

 

 

 

見てきましたよ。f:id:namikawani:20190824234219j:image

映画『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』公式サイト

 

 

正直、見る前怖かったんですよ。ただ予告時点でもうハチャメチャなのはわかったから、もうストーリーうんたらは期待せず、いわゆるとんでもないインド映画を観に行くようなテンションで臨みました。

 

結果。

ヤバかった。

想像を遥かに超えたバカ映画で、かつ何故かストーリーもちゃんとあった。何これ。

 

もし未見にも関わらずこのブログを覗いている方がいたら言いたいのですが、これはドラ○もんやク○ヨンしんちゃんが映画になったときと同じやつです。日常を過ごしている馴染みのキャラがなんだかおかしなことになり(でもそのキャラであることに変わりはない)、なぜか時空旅行したり宇宙に行ったりする。テ○朝得意の、というかテ○朝なアニメに飼いならされてそういうものになった、そういうパターンのやつです。これは日常ではありません。祭りです。祭りの映画なのです。頭のリミッターは全て外していけよ。

 

 

 

というわけでここからネタバレ全開でいきます。

 

 

① ストーリー編

 

予告を見て、「もうストーリーとかわからないほどめちゃくちゃな仕上がりかもしれない」と覚悟したものの、ちゃんとストーリーがありました。ありましたよ!!

 

注:なお、私は偏狭の春田モンペでして若干解釈が歪んでいる恐れがあります。気をつけてお読みください。

 

 

 

  • 二人の成長

 

牧くんは今回の映画で春田さんに向かって「はあ、もういいや」なる言葉を連発します。様々な場面で、様々な意図で発される言葉ですが、いずれにしろその後の会話を切る言葉です。その後自分が何か言葉を足したり、相手が釈明したりすることを許さない、コミュニケーションを拒む言葉。

このコミュニケーションを拒む場面、ドラマのときもありました。3話、武川さんを巡る牧くんの発言「まじデリカシー」も、ある意味これ以上説明する気はない意思が感じられますし、6話ラストのあのシーンも互いのコミュニケーション不足が決定的な要因だったのでは。ドラマ内での二人は、牧くんが春田さんに何か指摘し春田さんは何も言い返せなかったり、互いが話を聞かない場面もあったりして、矢印が一方的で互いにコミュニケーションとして成立しなかった展開が多かった。それが話の展開としてのものなのか、二人が恋人になりきらずルームシェアの関係であるぎこちなさから来るものかドラマでは判断がつかなかったのですが、この映画ではその課題をしっかり克服しようとしてました。

花火大会までの流れで、互いに伝えたいことを伝えられずすれ違う二人が、爆破という極限状態でまっすぐ向き合う。互いに伝えたいことをまっすぐ伝え、受け取って、考えて。伝え合い話し合う覚悟をもった二人なら、これから困難があったとしても逃げずに話し合って解決していくのだろうな、とこれまでを振り返りながら感慨深いものがありました。

 

  • 夢=将来

牧くんは「”いま”春田さんが好き」という衝動で春田さんにシャワーキスをした。

春田さんも「”いま”牧が好き」を自覚して牧くんにプロポーズした。

ドラマでは常に”いま”現在の感情を軸に行動してきた二人。そして互いに離れ、自分がこれから何をしていきたいのか、特に牧くんは自らのキャリア形成に関して深く考えることになったのでしょう。途中で夢や将来についてあまり考えていない春田さん(牧くんより年上)に苛立ちをぶつける牧くん。不安だったのだと思います。あの「一緒にいたい」という言葉は、春田さん自身がキャリアプランなど含め将来を考えて発した発言だったのか。親のことや子どものこと、同性で結ばれたカップルが直面する問題についてちゃんと考えているのかと(思えば、春田さんのお母さんの登場は”現状”で許しを得られていないことの暗示、牧くんのお父さんの登場は春田さんに将来を考えさせる示唆だったのだなと思います)。

爆破という極限状態におかれた中で、春田さんも自分の将来について考え牧くんと話をします。プロポーズしたときには考えていなかった、男どうしで結婚するってどういうことか。子どもはどうするのか。一生添い遂げられるのか。いまだけじゃなくて将来のことも考えて考えて、出した結論が「それでも牧と一緒にいたい」だった。

 

だから、最後牧くんはシンガポールへ行き、春田さんは営業所で仕事する描写が何だか好きなんです。互いが夢を実現しつつこれからも一緒に歩んでいくにはどうしたらいいのかたくさん話し合ったのだろうなと。性別に関わらず様々なキャリアを歩めるこの時代、自分もパートナーも仕事をしていきたいと思うなら、互いに転勤となったらどうするかなど考えることは山積しているはずです。その都度最善な方法は何か、二人で話し合っていくしかないのです。このラスト、働く選択をした二人のキャリア形成として妙にリアルだなと思いました。

 

 

 

 

② キャラクター編

五角関係とかいうキャッチコピーに散々踊らされたあの時を思いながら。

 

  • 春田創一

私、根っから春田さんが好きなんですが、この映画に関しては少し印象が違うんです。何が違和感なのかって、やっぱり「牧くんが第一」になったことだと思うんです。

ドラマでの春田さんは、部長にも牧くんにも、その他蝶子さんやいろんな人、とにかく目の前にいる人の好意や感情に全力で寄り添おうとしてしまい、ときにはそれでトラブルを起こしたり責められたり様々なことがありました。そのブレや揺れが苛々させることもあったかもしれませんが、その平等性みたいなものが私は大好きでした。と同時に、そんな人いる?とある意味人間を超越したようなところも感じていました。

でも徐々に、春田さん自身が自分の大切な、大切にしたい気持ちに気づいていく。その大事な気持ちが「牧が好き」ということ。

一方映画での春田さんは、牧くんを選んだ男の行動をしていました。もう部長から好かれても、迷うことなく「恋人がいるので」と断る。嫉妬もする。狸穴さんと対峙しても自分が受け入れればよいのではと考えてしまう自己犠牲的な一面はそのままですが、牧くんが第一だからこそです。その行動はある意味めちゃくちゃ人間らしい。これが大切な人を見つけた春田さんの変化。なんだか寂しさと嬉しさが入り混じりますが、良かったなあ、本当に良かったなあと心の底から思うのです。

 

  • 牧凌太

ストーリー編でも歪んだ解釈を書きましたが、牧くんはドラマ本編の中でも結構ブッチな行動を取ってると思っています。ドラマ内での数度の家出未遂、6話ラストの家出、そして映画内でも一度実家に戻ってしまいました。歪んでるのでブッチなどと表現してしまいましたが、牧くんは相手との関係性で不穏なものを感じ取ると「相手の元から去る」癖があるのだと思います。それは相手を想ってのことであり、またその状況に自分が耐えられなくなってのことでしょう。

映画内では、「春田さんが監禁される」という極限状態により、ドラマ版ラストの春田さんが牧くんを追いかける構図と逆の「牧くんが春田さんを救いに行く」構図となりました。牧くんが自ら春田さんのもとへ行く。そして炎に囲まれた中で、春田さんと向き合うのです。これまで何かあると向き合うことを避けてきた牧くんがこの究極の状態で、自分に足りないところ、そして一緒にいたい人は誰なのか真剣に向き合う。すごい変化だと思います。

 

  • 黒澤武蔵

拝啓、黒澤部長。本当に、あなたの存在が大きかった。本当にありがとうございました。

映画を観ていると、牧くんと春田さんの場面ではどうしても「ヒィ」と声が出てしまいます。どんなに愛おしい場面でも、字面だけ読んだら爆笑してしまいそうな場面でも、ただ「ヒィ」としか言えません。笑っていないのでもはやコメディかどうか怪しいです。もうなんだか笑ってみれない。ひたすら息を止めて、何か祈るような気持ちで、「ヒィ」。それしか出てこないんです。

でも部長。部長のシーンはどれもどうしようもないほど笑ってしまいダメです。自然と笑ってしまう。今回の部長は記憶喪失になってしまったりいろいろあったけれど、相変わらずの大きな愛でそこに立っていてくれましたね。部長という最強ヒロインの存在で、この作品をコメディとして楽しめています。本当にありがとう。

 

  • 山田正義

おっさんずラブという作品に、「神の啓示」的な登場人物に確実にインパクトを残す言葉を与えるキャラクターが出てくると思わなかったのでびっくりしました。花火大会のシーンは割と唐突でしたが、志尊さんのお芝居の説得力で胸打たれてしまい素直に受けとめられました。新キャラに志尊さんと沢村さんという配役自体今考えるとミスリードだなと思います。

映画の印象としては、春田さんが陽でジャスも陽のキャラだと思っていたら意外とジャスが陰だったので相性良いなと思いました。何を言ってるんでしょう。

 

  • 狸穴迅

サウナで誰よりも「良い体」だったの、いろんな意味で良くないと思います。

 

 

 

 

《シチュエーション編》

 

考えてみれば、ドラマのときから「壁ドンジェネレーター」なる企画が存在したり、「デコチュー」「うるさいので冷蔵庫ドンキス」など、いわゆる胸キュンなシーンが多発していた(自然な流れとかそういうのは演者の勢いと演技力と演出でねじ伏せられていた)。今回はどうか?

映画らしく「スケールアップ」しちゃいました。

 

 

▶春田の香港アクション

あ、割と唐突にアクションぶっこんでくるんすね〜〜と思った序盤の香港。おっさんずラブの世界に必然性も何もない。もうこの時点で「不動産」だの「恋愛」だのいろんなフィルターを外して見る映画なんだとわかる。車飛び越えるときの春田さんの足さばきがまさに春田ァ!という感じで中の人に大感謝でした。

あと香港の春田さんの部屋に牧くんがくるシーン。あの牧くん「もういいや」つって出てっちゃいましたが、牧くんは春田さんを想う女性に対しては強くいけないけど”男性”に対しては誰にも負けない自信があると思うんで、ベッドで寝てたあの男が牧くんを煽ろうものなら即座にキャットファイトだったんだろうなと想像しただけで萌えが止まりませんね。まあ実際、春田さんの特性(困ってる人を放っておけない)を理解しての「もういいや」だったと思うのでいいんですけど…。

 

きんぴらごぼう

すぐに元ネタはわかりましたが、それにしても、いやいや……まずいでしょ、観客気失いますよ??

公開前、おっさんずラブ公式ツイッターの企画でスペシャルPVなるものが公開されたじゃないですか。

これの23秒すぎたあたりの牧くんの表情、見ました? 目つき、目線の動かし方、完璧すぎる。無理。この動画寝る前に見たとき、もう本当に、中の人よぉ〜〜〜!!って叫びながら布団をゴロゴロしてました*1

と思ったら映画本編。なんとこのシーンの直後、「きんぴらごぼう

へ? き、きんぴら、ゴボウって、なに…?

このあたりから意識がありません。

 

ちなみに、その前のわんだほうでちずさんと牧くんがおしゃべりしてるとき、牧くんの「がむばろー♡」(幻でなければ本当にこの言い方だった)という言葉で一回召されたため、きんぴらごぼうももしかしたら幻かもしれない。幻聴かな?

 

▶サウナ

は〜好き。大好き。ここ、部長を見た瞬間の牧くんの目が狂犬なみにイッちゃうじゃないですか。ドラマ版牧くんは2話のキャットファイト以降、好戦的かと思いきやどんどん切なくなっていくので「どうしたんだよ牧くん…」と思ってたんですよ。そう、牧くんは元々好戦的でオスみの強い男。帰ってきたぜ、あの牧凌太が!!!(大歓喜

そういえば、あの3人が出演した徹子の部屋、田中さんを取りあう(?)林さんと吉田さんのやり取りが格闘技の「カリの達人」みたいに手慣れてて驚いたんですよ。

サウナ見て納得しました。そりゃ手慣れるわ。やり慣れてるもんな。

 

▶花火

互いに言いたくもないことを言い合って、どんどん涙目になっていく牧くんと春田さんがもういたたまれなくて目を背けそうだった。でもこれまで二人が真正面から言い合いしてるイメージって意外となくて、対等に言い合って喧嘩するのも関係性の変化なんだろうと思ったり。

 

▶爆破

春田さんが監禁されたあのとき、ああめちゃくちゃ春田さんっぽい…って思ったんですよね。二次創作を読んでてバチバチに解釈一致をみたのと同じような感動。

そこからいろんな人が救いに来て、これもツッコみだしたらきりがないです。でも、部長と牧くんが協力して救いにくるところ雲梯とかあったりめちゃくちゃコメディなのに、牧くんに言う部長の助言がこれまた部長…!って感じで本当に好きなんですね。この緩急こそおっさんずラブですね。

 

 

 

最後に

全体として、今回の映画大好きです。あのキャラクターたちが生きているところをまた見られた喜びも大きかったし、あのプロポーズのその後として何が起きうるのか描いてくれたところも含め、感謝しかないです。

またどこかでお会いできる日を、楽しみにしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:おっさんずラブのあと林遣都さんにどハマリし過去作巡りの旅に出た女のブログ